【川崎北労働基準監督署長 古屋 強】

新年明けましておめでとうございます。

平成28年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、一般社団法人川崎建設業協会並びに会員事業場の皆様には日頃から当署の行政運営に御理解と御協力をいただいておりますことに対し改めて厚く御礼を申し上げます。

近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が5割を超える状況にある中、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、全国的には増加傾向にあり、神奈川県下でも4年連続30件以上と高止まりの状況にあるなど、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが益々重要な課題となっています。

こうした背景を踏まえ、労働安全衛生法が改正され、平成2712月1日から、50人以上の事業場に対して、労働者のストレスチェックと面接指導の実施等が義務づけられました。この「ストレスチェック制度」の概要を紹介します。

1 ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個々の労働者のストレスを低減させるとともに、検査結果を集団ごとに集計・分析して職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減するよう努めることを事業者に求めています。さらに、ストレスの高い者を早期に発見し、医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。

労働者が50人以上いる事業所では、毎年1回、この検査を全ての労働者(契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外)に対して実施することが義務付けられました。平成2712月1日から平成281130日までの間に、全ての労働者に対して1回目のストレスチェックを実施する必要があります。

2 導入前準備

導入前の準備として、事業者は「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨の方針を示した上で、事業所の衛生委員会で、ストレスチェック制度の実施方法などを話し合います。その内容は⑴実施体制(制度全体の担当者、実施者、実施事務従事者、面接指導を担当する医師等)、⑵実施方法(使用する調査票、高ストレス者の選定基準、実施頻度・時期、面接指導の申し出方法等)、⑶ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析方法などです。決まったことを社内規程として明文化し、全ての労働者にその内容を知らせます。

3 ストレスチェックの実施

⑴質問票の記入

 使用する質問票は、以下の種類の質問が含まれていれば、特に指定はありませんが、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票を使います。

 ① ストレスの原因に関する質問項目

 ② ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目

 ③ 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

⑵記入が終わった質問票は、医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が回収します。第三者や人事権を持つ職員が、記入・入力の終わった質問票の内容を閲覧してはいけません。

⑶回収した質問票をもとに、医師などの実施者がストレスの程度を評価し、高ストレス(①自覚症状が高い、②自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い)で医師の面接指導が必要な者を選びます。

⑷結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知されます。結果は企業には返ってきません。結果を入手するには、結果の通知後、本人の同意が必要です。

⑸結果は、医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が保存します。結果を企業内の鍵のかかるキャビネットやサーバー内に保管することもできますが、第三者に閲覧されないよう、実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が鍵やパスワードの管理をしなければいけません。

4 面接指導の実施と就業上の措置

⑴ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申出(結果通知後1月以内)があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施(申出後1月以内)します。

⑵面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無とその内容について、意見を聴き(面接指導後1月以内)、それを踏まえて、労働時間の短縮など必要な措置を実施します。

⑶面接指導の結果は事業所で5年間保存します。記録を作成・保存しまが、次の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しても構いません。

 ①実施年月日 ②労働者の氏名 ③面接指導を行った医師の氏名 ④労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況 ⑤就業上の措置に関する医師の意見

5 ストレスチェック結果の集団的な分析(努力義務)

⑴ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計・分析(集団ごとに、質問票の項目ごとの平均値などを求めて、比較するなどの方法)してもらい、その結果を提供してもらいます。集団規模が10人未満の場合は、個人特定されるおそれがあるので、全員の同意がない限り、結果の提供を受けてはいけません。原則10人以上の集団を集計の対象とします。

⑵集計・分析結果を踏まえて、職場環境の改善を行います。

6 労働者に対する不利益取扱いの防止

事業者が以下の行為を行うことは禁止されています。

⑴次のことを理由に労働者に対して不利益な取扱いを行うこと

   ①医師による面接指導を受けたい旨の申出を行ったこと ②ストレスチェックを受けないこと ③ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しないこと ④医師による面接指導の申出を行わないこと

⑵面接指導の結果を理由として、解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うこと

7 労働基準監督署への報告

事業者はこうした検査等の実施状況について、所管する労働基準監督署に報告書を提出する必要があります。

提出時期は、年度終了後など事業場ごとに設定して差し支えありません。

 

「ストレスチェック制度」の具体的な内容については、「実施マニュアル」が厚生労働省ホームページに掲載されています。

www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

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